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初紅葉

初紅葉1枚目

カエデなどの紅葉(こうよう)は、急に寒くなると色づきが良くなるそうです。だらだら寒くなると、枯れた色になってしまうのですが、昼夜の寒暖の差が一気に進むと、真っ赤になるとか。そういう意味では今年は紅葉が期待できるかもしれませんね。

落葉樹は、寒暖の差を感じると、冬に向けて葉を落とす準備のため、葉と幹との間にコルク層を形成し、栄養経路を遮断します。そのため、光合成で生まれた糖分が葉に貯まり、この糖分が、赤い色素である「アントシアニン」に変化して、赤くなるのだそうです。アントシアニンといえば健康サプリにもありますね。大阪箕面名物の「紅葉の天ぷら」は健康食品だったのかも?!

ただ、こうした「紅葉するメカニズム」は明らかなのですが、「何の目的で紅葉するのか」は不明なのだそうです。春の花は虫を呼び寄せて受粉するという目的があります。しかし「後は散るだけ」の葉が、なぜこうも美しく彩るのか。老いらくの恋…といったロマンチックな目的ではないでしょうけれども……。

カエデの葉は、形も面白いですし(カエルの手に似ているからカエデ)、真っ赤に紅葉する見事さが最高ですので、紅葉の代表としてモミジとも呼ばれますね。平安の貴族たちもその風情を愛し、新緑から青い盛り、やがて黄変・赤変してゆく様を、それぞれに名前を付けて、重ね色目で表現しました。

桜や菊とならんで、同一植物が様々な色目のバリエーションとして扱われる数が多いのが、このカエデ。季節季節の自然の移ろいを、生活に活かすセンスにかけては、平安貴族にはとてもかないません。

今日ご紹介するのはトップを飾る「初紅葉(はつもみじ)」。表が萌黄で裏が薄萌黄。裏がほんの少し黄色味を帯びて参りましたが、表はまだまだ青いままの風情です。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)