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莟紅梅

莟紅梅1枚目

立春も過ぎると、梅が咲き始めます。紅梅白梅とありますが、まず紅梅から花開くようです。
そこで今回ご紹介する重ね色目は「莟紅梅(つぼみこうばい)」、表紅梅色、裏蘇芳色です。

今日、「バラ色」と言えばバラの花びらの色。「すみれ色」と言えばスミレの花びらの色を指すのが普通でしょう。しかし有職文化の美意識、色彩感覚では、花びらの色だけでなく、茎や葉、萼(がく)までも、すべてをひっくるめて表現します。自然のすべてを大切にする、いかにも日本的な美意識ですね。

『女官餝抄』(一條兼良・室町中期)
春冬の衣、いろいろ。(中略)
つぼみ紅梅。おもて紅梅、うらすわう、あをきひとへ、もえぎのうはぎ、ゑびぞめの小褂。

『西三條装束抄』(三條西実隆・室町後期)
衣色。
梅。<面白。裏蘇芳。十一月至二月>。 莟紅梅。<面紅梅。裏蘇芳。>

莟紅梅という重ね色目は、遅くとも鎌倉時代には生まれています。

『とはずがたり』(後深草院二條)
(文永八(1271)年新春)呉竹の一夜に春の立つ霞、今朝しも待ち出で顔に花を折り、匂ひを争ひてなみゐたれば、われも人なみなみにさし出でたり。莟紅梅にやあらん七つに、紅の袿、萌黄の表着、赤色の唐衣などにてありしやらん。梅唐草を浮き織りたる二つ小袖に、唐垣に梅を縫ひて侍りしをぞ着たりし。

『北山院御入内記』(一條経嗣・1407年)
三條殿。<弁の入道すけもちの御むすめ>。
つぼみこうばいの五絹。あをきひとへ。もえぎのうはぎ。からぎぬ。も。うちぎぬ。はかま。さきにおなじ。

「つぼみ紅梅」は、花の色と萼の色。
百聞は一見にしかず。写真を御覧あれ。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)