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梅1枚目

梅は初春の色でもあり、実に多様な種類の重ね色目のコーディネートがあります。色の華やかさから紅梅モチーフのものが多いのですが、「梅」がさねは白梅。

『物具装束抄』(花山院忠定・室町前期)
布衣事。
梅狩衣。面白。裏蘇芳。自五節正月十五日マデ年少人着之。

『女官餝抄』(一條兼良・室町中期)
梅のきぬ、<おもてしろ、うらすわう>、すわうのひとへ、こうばいのうはぎ、あかいろのこうちぎ。(中略)梅、紅梅は十一月五節より二月まで。

男女ともに使っていた色、ということがわかりますね。
表が白で、裏が蘇芳の組み合わせ。
これを現代風に勘違いして、この組み合わせを「白梅と紅梅の色」と説明する本も多いのは残念なことです。有職世界の美意識は、表面的な花びらの色だけではない、モチーフのさまざまな部分にも注目した繊細なものなのです。

ずばりこの色の組み合わせは、白梅の花びらと萼(がく)の色。
どうでしょう。写真は職場の近所で撮影した白梅。花弁と萼の色の組み合わせが、まさにピッタリの色合いではないでしょうか。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)