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かえで紅葉

かえで紅葉1枚目

東京でも、日当たりの良い木々は美しく紅葉しております。紅葉は、光合成で生じた糖分が発色するのですから、日当たりの良い葉が美しく色づくのです。中野にはその名も「紅葉山公園」がありますので、さきほど覗いてみましたら、よく日の当たる枝の葉が赤くなっていました。

『満佐須計装束抄』(源雅亮・平安末期)には「紅葉の様々」として、「紅紅葉・櫨紅葉・青紅葉・かえで紅葉・もぢり紅葉」の5種類もの紅葉の重ね色目が紹介されています。いかに平安貴族たちがこの季節の日に日に変化する紅葉を楽しんでいたか、よくわかります。今日あたりの風情は「かえで紅葉」でしょうか。

「薄青二、黄なる山吹、紅。紅の単にても蘇芳の単にても。」

これは女子の「五衣(いつつぎぬ)」の重ね色目ですが、平安の感性では、真っ赤っかよりも、青から赤になるグラデーションこそを美と感じたようで、『満佐須計装束抄』に登場する5種の「紅葉」は全て色の移ろいを示すグラデーションです。

『餝抄』(中院通方・鎌倉中期)
一下襲(中略)紅葉。十月十一月晴着之。青紅葉。黄紅葉。紅紅葉。櫨紅葉。色々。蝦手紅葉。在人情。

これは男子が束帯装束で袍の下に着る「下襲(したがさね)」の重ね色目。特別なイベント時に「一日晴」と称して、各人の好みで、こうしたゴージャスなタイプを用いました。しかし肝心な色目の詳細が判りません。

それにしましても、平安人は本当に紅葉が好きだったのですねぇ。それは短期間にもっとも「自然の移ろい」が感じられるものだからと思います。自然との一体感こそが、平安の美意識なのです。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)