
脛巾は足を保護したり袴を着用した際に裾を始末するために藁や布を脛に巻き付けて紐で結び留め動きやすくしたもので、後世の脚絆にあたります。低い武官の正式の服装である褐衣や布衫等の着装の際、活動がしやすいように用いられました。
〝いちび〟はインド原産のアオイ科の植物で別名を桐麻・白麻等と言い、かつては繊維植物の用途として広く栽培され粗布や綱の素材などとしても用いられた麻の一種です。
いちびの皮の繊維で編んだ脛巾は上部を糸で編み下の方は割いて垂らしたままの為、使用するに伴い下端が広がっていきますが、この部分にはゴミや雨除け雪除け、泥の跳ね返り防止等の効果がありました。

現在では夜間に行われる大嘗祭で庭燎を焚く火炬手の他、葵祭や時代祭で斎王代を乗せた腰輿や桓武天皇・孝明天皇の神霊を乗せた鳳輦を担ぐ駕輿丁等が使用しています。
多くは白い紐を用いますが本品は鈍色の紐が用いられているため凶事に使用するものと思われます。
戦前まで歴代天皇の駕輿丁を務めた八瀬童子の家には、大正天皇の御大喪の際に使用した橡色の布衫や鈍色の裲襠、細纓の冠と共に橡色の紐の脛巾が伝わり、御大礼の際の駕輿丁装束と共に八瀬童子関連資料として重要文化財に指定されています。
