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花橘

花橘1枚目

花橘の「花も実もある」写真です。
白い花と黄金色の果実がそのまま残っておりますね。

『源氏物語』(若菜下)
五月待つ花橘、花も実も具しておし折れる薫りおぼゆ。

まさに「花も実も具して」の風情です。

『枕草子』
四月のつごもり、五月のついたちのころほひ、橘の葉の濃く青きに、花のいと白う咲きたるが、雨うち降りたるつとめてなどは、世になう心あるさまにをかし。花の中よりこがねの玉かと見えて、いみじうあざやかに見えたるなど、朝露にぬれたるあさぼらけの桜に劣らず。

やはり「花の中から黄金の玉のような果実が鮮やかに見える」、とありますね。実物のタチバナを見ますと、まさにその通り。清少納言や紫式部と同じものを見て、同じような感動をしている自分が、なぜか嬉しくなります。
さて、重色目ではどうなっていたでしょう。

『後照念院装束抄』(鷹司冬平・鎌倉後期)
染装束事(中略)花橘四五月、面朽葉裏青色。已上下襲也。
『胡曹抄』(一條兼良・室町中期)
衣色事(中略)花橘<面朽葉裏青、五月>。

その他の文献を読んでもほぼ同じで、「表朽葉(オレンジ)/裏青(グリーン)」です。しかしこれですと、葉と果実だけで、肝心の「花」が表現されていませんね。
女子装束の襲色目では……

『満佐須計装束抄』(源雅亮・平安末期)
女房の装束の色。四月薄衣に着る色。
花橘。
山吹濃き薄き二。白き一。青き濃き薄き。白単。青単。

おお、これぞバッチリ、葉と花と果実の色。
さすがは源雅亮です~。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)