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女郎花おみなえし

女郎花1枚目

7月23日は「女房が女郎花色の装束を着た日」でございます。

『装束集成』(江戸中期)
天治元(1124)年七月廿三日、若宮入内、斎院初参、女房車一両、女郎花単重紅表着、赤色唐衣、地摺裳、張袴。嘉禎三(1237)年七月十七日、鷹司院御入内、出車衣、蘇芳単重、紅引倍木、女郎花表着、二藍唐衣、張袴、半物衣、女郎花単衣、紅引倍木、二藍唐衣、張袴。建久二(1191)年七月十三日、宣陽門院御幸、出車五輛、女房衣、蘇芳単重、女郎花表着、二藍唐衣、半物衣、立青単重、蘇芳表着、女郎花唐衣。

七月に多用されている色目が「女郎花(おみなえし)」であることが特徴的ですね。この季節に、「秋の七草」である女郎花というのは少し早いかな?と思われるのですが、これは当然ながら旧暦の七月のこと。旧暦7月23日は今年の新暦では9月5日です。それならば、まさに季節真っ盛りと言えるでしょう。

現在、和装の世界では「季節先取り」として、自然界より1か月ほど早いモチーフの着物が用いられることもあります。暑い盛りの今に、秋の草花モチーフの着物を着る。少しでも涼やかなイメージを、と言うこともあるでしょうが、何のことはない、新旧の暦を換算させれば、平安以来の故実通りであることが判ります。

「女郎花」は平安時代以降、有職の世界では大変に愛用された色で、数多くの文献で見る事が出来ます。色彩としては青味を帯びた黄色のこと。タテ糸とヨコ糸の色を変えた「織り色目」と裏地の色で表しました。

『河海抄』(四辻善成・室町前期)
をみなべしのかざみは、面の竪青、ぬきは黄にて、裏もえぎなり。

タテ糸に青(グリーン)、ヨコ糸に黄をかけた綾、玉虫色の輝きが出ます。そして裏地もグリーン系。タテ青ヨコ(ヌキ)黄の織物をPC画面のカラープレートで表現するのは難しいので、ドット単位で黄色とグリーンを混ぜてみました。画面の上下左右斜めから眺めて下さいませ。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)