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よもぎ

蓬1枚目

色鉛筆「日本の伝統色」シリーズもそうであるように、私は日本の伝統文化を表現するキーワードは、3つあると私は考えています。

外国の方でも日本文化に関心を持たれる方は、江戸時代の浮世絵に代表される「粋(いき)」や、茶の湯のような室町時代の「侘び(わび)」はよくご存知。私はそれぞれ「smart」「silence」と説明しています。そこまでは理解されるのです。日本人の皆様にも。

しかし私はここで、「なにか忘れちゃいませんか?」と申し上げたいわけです。それが平安時代の「雅(みやび)」、つまり「elegant」です。この、elegant ・silence・ smartこそが、日本文化の三大キーワードであると考えます。

そんな話をしていましたら、お若い方に 「第4のキーワードも生まれましたよ」 と言われました。それは何かと尋ねたら……。 「萌え」 だそうです。「AKB萌え」とかそういう、あの「萌え」ですね。なるほどねぇと思いました。現代の「萌え」は平安古語の「うつくし」でしょうか。幼い者、可愛らしい物をいとおしむ気持ち。でも微妙に違う気もします。英語にすると何なのでしょう。やっぱりmoe? ちょっとこれは日本人にしかわからない不思議な感情表現なのでしょうかね。

さて本日10月10日は「萌」の日だそうでございます。
漢字の「萌」を分解すると「十月十日」になるからだそうです。なるほどね~~。

それだけでは何ですので、「萌」に相応しい重ね色目も。
「蓬(よもぎ)重ね」でございます。草餅をつくる、あの蓬。今がどんどん成長する時期ですね。重ね色目は表は淡萌木、裏が濃萌木。萌木は萌黄とも書きますが、新緑の色、ということで明るいグリーン。 『源氏物語』では「蓬生」の巻で、末摘花の屋敷の周りに蓬が繁殖する様子を描き、経済的困窮を表現していますが、決して雑草として嫌われていたのではなく、食用にもなりますし「お灸」の艾(もぐさ=もよぐさ)にも使えるということで「医草」とも呼ばれ、芳香が清々しいと、身近で愛されていた植物です。

『和名類聚抄』(源順・平安中期)
蓬 兼名苑云蓬、一名蓽<艾也。蓬蓽二音逢畢。和名与毛木。艾音五盖反>。本草云艾一名医草。

『枕草子』
節は五月にしく月はなし。菖蒲・蓬などのかをりあひたる、いみじうをかし。

「よもぎ」の語源には諸説ありますが、「弥(いよ)萌(もえ)茎(き)」ではないかという説が有力で、「もよぎ」と発音する地方もあるようです。つまり「萌よ茎」確かに春の旺盛な成長力と繁殖力を考えますと、さもありなん、です。重ね色目もまさにそうした雰囲気をよく表した組み合わせではないですか。。萌え~~♪

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)