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紅紅葉くれないもみじ

紅紅葉1枚目

12月に入りましたが東京は暖かく、紅葉もいよいよ真っ赤でございます。

『満佐須計装束抄』(源雅亮・平安末期)
 紅葉の様々。 紅紅葉。紅、山吹、黄なる、青き濃き薄き、紅の単<蘇芳単トゾ覚ユル>。

これは女子の「五衣(いつつぎぬ)」の重ね色目ですが、「べに紅葉」という名称の割に、赤みが少ない配色です。平安の感性では、真っ赤っかよりも、青から赤になるグラデーションこそを美と感じたようで、『満佐須計装束抄』に登場する五種の「紅葉」は、真っ赤っかなイメージではなく、グラデーションです。

『餝抄』(中院通方・鎌倉時代)
出衣 仁安三(1168年)十一。故殿(通親)櫨紅葉五重<ヲメラカス>。面織物。紅紅葉三。青単衣。

これまた平家全盛の時代。 「出衣」というのは、牛車の簾の下から、美しい十二単の裾の重なりを見せる、一種のデコレーション。「ヲメラカス」というのは表地を後退させて裏地を見せる、ということです。それにより五重が十重にもなるのです。ゴージャス!

平安末期、美意識が「みやび」から「風流(ふりゅう)」に替わります。風流は現代使われている意味ではなく、ど派手なゴージャスさを意味します。

『実躬卿記』(三條実躬)
弘安八(1285)年十月十八日、天晴。幸住江日也。早旦装束、黄紅葉水干<半尻、面葛板引、以赤地錦替昇端袖、処々結紅紅葉付之。折右端袖左吹返、緂之>。

派手な水干のあちこちに「紅紅葉」のコサージュを付けています。このコサージュ「附け物」を「風流」と呼ぶ事もありました。そして武家の重ね色目としての紅紅葉は……

『雁衣抄』(鎌倉時代末期?)
紅葉。面赤色、裏濃赤色。

平安の「移ろいの美」よりも、ドドーンと一発、ゴージャスな色彩美です。色の好みと人の感性は時代と立場に見事に一致するものですねぇ。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)