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もぢり紅葉

もぢり紅葉1枚目

先日、深大寺で紅葉狩り。
青から黄、そして深紅へのグラデーションが何とも素敵でした。特にお日様を向こうに透かして見える紅葉の美しさと言ったら!!これを重ね色目で表現したものが「もぢり紅葉」でしょうか。

『満佐須計装束抄』(源雅亮・平安後期)
もぢり紅葉。
青き濃き薄き二、黄なる、山吹、紅。裏は蘇芳、紅、山吹濃き薄き。紅の単。

「もぢり」というのは裏地に逆の色を付けること。青に蘇芳の裏地を付ける、などです。これによって色彩表現がより複雑に深まりますね。

『曇花院殿装束抄』(後奈良天皇皇女聖秀尼宮・室町後期)
ちりもみぢ。
一六、二同<朱常ノフチ>、三同<朱フトリ常ノ一倍>、四キ、五朱、六同、七同。

ここでいう「六」とは「緑」のことです。青~黄~赤の並び、緑に朱の裏地を付けるなど、『満佐須計装束抄』の「もぢり紅葉」と似た配色です。そうしますと「もちりもみち」(平安は濁点無し)と「ちりもみち」が気になります。『曇花院殿装束抄』の筆写を繰り返すうちに「も」が落ちてしまった可能性もあるかと思います。「散り紅葉」のほうが一般的な単語ですから、「きっとこうだ」と誤修正してしまった可能性も。

いずれにしてもグラデーションを愛した雅な美意識は、平安から室町に受け継がれ、そして今日もわたくしたちの中にも連綿と続いている事は間違いありませんね。

(有職故実研究家 八條忠基さん Facebook投稿より)