公家童女正装としての汗衫とは異なり、扇面法華経の下絵に見られる平常の姿で、単仕立。肩の袖付けの縫い目をほころばせ、これを「ゆだち」といい、組紐を通して結ぶ。素肌のまま切袴をはき、その上に着ている姿が見られる。
満佐須計装束抄には次のように述べられている。
かざみのひだりのはたそでのたもとのすぢを、五、六寸ばかりほころばす人あり、ゆだちとなづけたり、ぞくのひがごとなりぬひふたぐべしかざみにゆだちをあくるとは、左のわきのぬひめのまへをたもとまでほころばして、くみにてひもをつくるなり
即ち前段は誤りを述べ、後段を正としている。左の袖の脇、この縫目の前をあけることもあって、扇面写経の図は右の袖の脇があけられ相違している。
満佐須計装束抄前文につづいて次の説明がある。
この儀つねならず、のり弓の射手にいりたる宰相の中将の、五せちをたてまつらんにあくべしとそ申つたひたる。
このようにあるので、やはり左の袖を正とすべきかと、ここでは左の袖の脇をあけることにした。