平安時代の僧侶の常装は裳付衣である。即ち墨の等身、垂領、有襴で、公家の袍を垂領にして簡易化したというより、むしろ公家の袍の原形ともいうべきもので、無位無官の袍という意の空袍、空衣の名も残っている。裳付の名は、その形状から称したものといえよう。素絹の名はこの形状を儀式化した本来白絹のもので、後にはこれと混同されている。
京都六波羅蜜寺の13世紀前半の作である空也上人像は、この姿に袈裟を巻いてかけ、肩から鉦をつるして撞木を右手に、左手には、わさづの(鹿の角)を頭部につけた杖を持っている。ここでは空也上人になぞられた。