花樹双鳥文夾纈
二枚の板に同じ文様を彫り、その間に布を挟んで染め上げる夾纈は、インド、中国、そして日本で行われた古い防染文様染の一つである。多色に染める場合には浸ける染料によって、あらかじめあけた染料の浸透する穴を詰め替え、文様にそって彩色をする。友弾的な色挿しや引染で行えばいとも簡単であるが、天然染料のほとんどは染液に浸けて染めなければならないので、こうした技術が考え出された。失敗する可能性は高く困難なため、日本では平安以降、中国では明代の初めより多色のものは途絶えた。幻の染色である。
夾纈の染め方
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①夾纈の版木。この場合は左右対称の一つの文様を中央で割り、2枚の版木としている。
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②湿らせた布を版木に乗せる。
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③布の上に、これも湿り気を与えた和紙を重ね、染料のにじみを防ぐ。
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④布を折り返し、布・和紙・布の三層に重ねる。
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⑤もう1枚の版木を上に重ねる。版木の裏面には、必要な防染個所が判別できるよう文様の色分けがされている。
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⑥版木がずれぬよう仮止めをし、防染したい文様部分の穴に木栓を詰める。
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⑦染料の浸透を妨げぬよう注意しながら、版木の上下に棧木をわたし、しっかりと括り留める。
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⑧藍の染浴に版木を浸し染色する。
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⑨藍の染色。この文様は藍、黄(刈安)赤(茜)の順に染色をくり返し、紺・黄・緑(藍と刈安の染め掛け)、赤の4色夾纈としている。
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⑩染めあがった夾纈の版木を開く瞬間。華麗な天平の文様染が浮かび上がる。
様々な夾纈
夾纈羅
薬師寺玄奘三蔵会大祭伎楽において呉女の領巾として使用。
大唐花文夾纈羅
呉公が着用する前垂れ。
菱文夾纈裲襠
薬師寺玄奘三蔵会大祭伎楽において治道が着用したもの。