緑地襷魚鳥文﨟纈・茜地唐花文﨟纈・紫地縞文夾纈
蠟の持っている油性で水をはじいて防染するのがローケツ染(古代は﨟纈と呼ぶ)である。布帛に版あるいは筆で蠟を置いて文様を表わし、それを染液に浸けると、そこには染料が浸透して行かない。ローケツもインドがその源流とされるが、中国、日本の七~八世紀の染物にも数多く見られる。ただ、日本では蜜蠟の輸入が止まったせいか、平安時代以降は行なわれなくなり、その再興は明治になってからである。
緑(槐花染×藍染)
槐は高さ二千メートル以上にもなる喬木で、中国・日本において古くより栽培されている。初夏、豆の花に似た淡白色の蝶形の花が房状に咲くが、その蕾が染料・漢方薬に用いられ、槐花あるいは槐米と呼ばれている。黄色の美しい色が得られることから、これを先に染めてから藍を染め掛けて、緑系の色を出す。刈安、黄蘗などの黄色系の染料も同様に用いられる。
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①﨟纈の版3種。
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②白生地に版で蠟を置いて文様を表わす。
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③染料となる槐花の蕾。
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④槐花の蕾に水を加えて沸騰し、色素を出す。
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⑤抽出液を入れた染液で②の布をくる。
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⑥明礬溶液のなかで鮮やかに発色させる。
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⑦槐花染した布に、魚文と鳥文2種の版で蠟を置く。
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⑧藍を還元醗酵させた染浴で⑦の布を浸染する。
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⑨米酢を加えた水槽で洗い色を定着させる。②で蠟を置いた部分は白く、⑦の部分は槐花の黄色に、地色は緑色に染め上げる。