主な用語解説
か
懐紙(かいし)
たたんでふところに入れておく紙。和歌連歌などを正式に詠進する時に用いた檀紙もしくは杉原紙など。
搔取(かいどり)
公武家女子の打掛の呼び名。近世、綸子地を打掛と云い、縮緬地のものを搔取と云う。
鏡の輪(かがみのわ)
神楽・人長の舞の時に舞人の持ちものの榊につけられた白い輪で、鏡を象徴しているもの。
格袋(かくぶくろ、はこえ)
縫腋袍の後身の腰の辺を引き上げてたたみ、左右を折りこんで袋状にした部分。
懸(掛)緒紙捻(かけおこびねり)
冠または烏帽子にかける紙のひねり紐。
懸(掛)帯(かけおび)
女房装束の裳の腰に付けた紐で、肩から越して前面で結ぶもの。足利時代後期から江戸時代の女房装束の再興までの裳に付けられている。その他、女房のつぼ装束の時、胸のあたりに掛ける平くけの帯もいう。
懸(掛)守(かけまもり)
公家や武家の婦人が物詣や旅の時に肩から胸にかける守袋。
笠(かさ)
日光、雨、雪等を避ける為に頭部につけて覆うもので、竹、藺、藁、紙などで出来ている。
風折烏帽子(かざおりえぼし)
立烏帽子の頂の所を折りふせた形の烏帽子。
挿頭華(かざし)
髪にさす飾り。古代には髻華と称し、花や葉を髪にさすことであったが、奈良時代ころから髪ばかりでなく冠にさす造花のことにもなった。中古より儀式に用いるのは金属製のものとなった。
飾剣(かざたち)
儀杖の太刀すなわち儀式の時に用いた太刀。身につける為の足金具が山形づくりになっている。
襲(かさね)
重ねて着ること、またその物を指す。
汗衫(かざみ)
汗取りの衣の意であるが童女の礼装とされ、藤原時代以降は長大な形状のものが公家童女の礼装として用いられた。
飾り紐(かざりひ)
紐で飾りとしたもの。袴の腰の飾り紐、衵扇の飾り紐などがある。
花子(かし)
奈良時代、唐風の影響をうけたもので、婦女の顔の化粧の一つとして眉間や唇の両端近くに紅点或いは藍などをつけたものをいう。「花鈿」ともいう。
肩当(かたあて)
唐風の挂甲の着装に際し肩からの首まわりにつける錦の裂。舞楽・太平楽などに用いる。
肩衣(かたぎぬ)
袖のないもので、上半身につける。
肩喰(かたくい)
唐風の挂甲着装の際に腕を通して肩につけるもので、獣面などになっている。舞楽・太平楽などに用いられる。
帷子(かたびら)
麻のひとえの着物。
肩鎧(かたよろい)
古墳時代の甲の上に両肩から上膊部にわたっての薄い鉄板製の被覆物。
褐衣(かちえ)
闕腋袍の系統をひく、布製のもの。諸衛府の舎人が用い、随身の際の召具装束とした。
被衣(かづき)
カツキの転。衣を頭から被って着ること。「きぬかづき」ともいう。
被く(かづく、かつぐ)
頭から被ること。「小袖を被く」などと使う。
合当理(がったり)
旗指物の受け筒をさすために当世具足の背につける、金属製の枠。
鬘帯(かつらおび)
頭髪の乱れを防ぐ為に頭髪を締める帯。
桂包(かつらつつみ)
室町時代末ころから江戸時代初めころまで賤女が長い白布で頭髪を包んだもの。
花鈿(かでん)
唐風の影響をうけた婦女の顔の化粧で、眉間や唇の両側に紅や藍などをつけたもの。「花子」ともいう。
兜(かぶと)
戦闘に際し、頭にかぶる鉄製または革製の武具。
髪置(かみおき)
唐衣の襟が方立になっている部分で、下げ髪が載る所。唐衣の髪置などという。また、別に少女が髪をのばす儀式をいう。
冠下の髷(かむりしたのまげ)
髻のこと。
背子(からぎぬ)
唐風のよそおいで、上半身につける袖なしのもの。
唐衣(からぎぬ)
公家女房晴装束の一番上に着る袖幅の短い半身の衣。
唐輪髷(からわまげ)
婦女の頭髪を頂部で立て上げて結った髪形で、桃山時代頃中国の明から伝来したといわれる。
狩衣(かりぎぬ)
狩に行く時の服からきた衣で、身幅一巾で闕腋、袖露がつけられている。
蝙蝠(かわほり)
「かわほりおうぎ」の略。開いた形が蝙蝠の羽をひろげた形に似るからいう。骨は紙の片側にある。
貫頭衣(かんとうい)
布の中央付近を開けて頭から被って着る布。
き
菊綴(きくとじ)
衣服の装飾に用いる糸。もとは衣服の縫い目のほころびを防ぐ為のもので、生糸を束ねて開げるとその形が菊のように見えるのでこの名がある。後には装飾として用いられている。また生糸をかえ組紐或いは革で作られてもこの名で呼ばれることがある。
吉弥結び(きちやむすび)
江戸中期、俳優上村吉弥の好んだ帯結びの一種。背後に結んで垂れる。
着附(きつけ)
身につける小袖。
脚絆(きゃはん)
脚部を覆う布。
毬杖(きゅうじょう)
毬技に用いるもので、毬を打つ棒をいう。また「ぎっちょ」ともいわれ、子供の遊具の一種になっていた。
裘代(きゅうたい)
法皇・諸門跡または大納言・参議以上で法体となった人が参内などの時に着た法服。
鳩尾板(きゅうびのいた)
大鎧の付属具で、左高紐の上を覆うようにつけた一枚の縦長の革包みにした鉄板。
裾(きょ)
束帯着用の時に、長くひく下襲の裾、及び闕腋袍の裾の部分。
夾纈(きょうけち)
模様を切り通した2枚の薄板の間に、幾重かに折った長い布をはさんで固く締め、染料をつぎ掛けて染めたもの。染め上がりは布の折り目を中心に左右対称となるのが特色。
杏葉(ぎょうよう)
胴丸の肩を防ぐためにつけた、染め皮でくるんだ鉄製の細長い葉形の金具。後に肩に袖がつけられると胸の左右に下げられるようになる。
魚袋(ぎょたい)
朝服、束帯の時に右腰に吊し宮廷の門札とされたが、後には装飾の威儀のものとされた。
切袴(きりばかま)
身丈一杯の袴で、裾をくくらないもの。紅の切袴、緋の切袴などと使う。
金帯(きんたい)
背の腰にあてる帯で、金属で作られている。
く
括袴(くくりばかま)
裾を括った袴。
くけ帯(くけおび)
布を合わせて縫い上げた帯。
草摺(くさずり)
鎧の腰に分かれて垂れている裾の部分。
具足(ぐそく)
完備したものの意で、甲冑では鉄砲伝来以後のものを当世具足とも、また単に具足ともいう。
裙帯(くたい)
女房物具装束の時、裳の左右に飾りとして添えて垂らした紐。
屈紒(くっかい)
髪をまげて結うこと。
頸かみ(くびかみ)
盤領(上げ頸)の装束の、頸の廻りにある小襟の部分。
頸珠(くびたま)
首飾りの珠。
頸鎧(くびよろい)
古墳時代の甲の時、頸部を保護する為につけられた鎧。
條帯(くみのおび、じょうたい)
斜め格子に打った平組の帯。安田打の組み帯。
烏皮履(くろかわのくつ)
鼻高履。黒い革製。爪先を高く作ったくつ。
烏皮舃(くろかわのくつ)
黒漆塗皮で作られ、足指先付近が高く作られたくつ。
黒木(くろき)
皮のついたままの木。薪用の柴などもいう。
烏油の腰帯(くろぬりのこしおび)
黒漆塗の革製の腰帯。衣服令の朝服に用いられる。
鍬形(くわがた)
前立の鍬形。 兜の眉庇の上の前立の飾り、左右に角のように立つ装飾。農具の鍬の形に似ているのでその名がある。
裙(くん)
繊維製で、下半身にまとうもの。裳。中国風に裙子ともいう。
軍扇(ぐんせん)
軍勢を指揮するのに用いた扇。
け
ケープ
肩かけのマント。
挂甲(けいこう)
「かけよろい」ともよむ。中国の影響をうけた小札ごしらえの甲。
毛履(けぐつ)
くつの一種。熊などの毛皮で作ったもの。貫という。
袈裟(けさ)
袈裟付の羅衣と称されている背面の方形のもの。濁色の意で、仏教成立以来、僧尼の服と定められたものであるが、後には仏教教団に属していることを表わす象徴として僧尼必須のものとなり、金襴や錦織の立派なものも用いられるようになった。
袈裟文庫(けさぶんこ)
袈裟などを収める箱。
下散(げさん)
具足の草摺の異称。
牙笏(げしゃく)
象牙で作られた笏、衣服令によると五位以上の用。笏は本来「こつ」とよむが「骨」に通ずるので忌まれ、公家では「しゃく」とよむのが例となった。
毛付陣笠(けつきじんがさ)
陣笠にしゃぐまの毛をつけたもの。
闕腋袍(けってきのほう)
束帯の表衣である袍の中で腋を縫わない袍で、また襴という横裂を裾に付加しないもの。
偈箱(げばこ)
仏教の経本などを収める箱。
巻纓(けんえい)
冠の纓を巻いたもので、武官が用いる。
こ
小威儀(こいぎ)
横五條形式の五條袈裟の両端末にある結び紐。
笄(こうがい)
男女ともに髪をかきあげるのに用いた細長い具。冠の巾子に挿されているものも笄であり、また、後世、婦人の髷に挿して飾りともなる。
纐纈(こうけち)
布帛を糸で絞り込んで、染料の浸透を防ぐことによって文様を表わす技法である。「鹿子絞り」のこと。
小袿(こうちき)
袿の形の小さいもので、身分の高い公家婦人が私の晴れ着として用いた。通常、陪に更に中陪が加えられている。
行李(こうり)
旅行用の荷物を入れる具。竹または柳で編み、「つづら」のようにつくったもの。
小腰(こごし)
公家婦女、晴れの装いの際の裳の左右につけられた紐で、裳を身につけて結ぶ為に用いられる。
腰(こし)
身体の部分の名称であるが、衣類の名称として、腰の部分をしばる紐をいう。
巾子(こじ)
平安時代以後、冠の頂上後部に高く突き出て髻をさし入れ、その根元に笄を挿す部分。また市女笠や綾藺笠の頂上にある髻を入れる立ち上がりの部分。
腰板(こしいた)
男の袴の腰の背に当ててある板。
腰刀(こしがたな)
腰に挿す短い刀。小刀。
腰継(こしつぎ)
法衣の直綴や道服には、上・下を連綴する個所が腰のあたりであるのでこの連綴のことをいう。
腰布(こしぬの)
下半身を覆う布。横幅の腰布などがある。
巻(こしまき)
打掛、小袖を両肩脱ぎして腰に巻いたもの。江戸時代以後には肌に直接つける腰布をも指すことがある。
胡床(こしょう)
相引ともいう。四本の木を二本ずつ交叉して組み合わせ、更に上下に横木をとりつけ、上部を綱或いは布で結びとめた腰掛け床几。
五條袈裟(ごじょうげさ)
袈裟はKasãya(梵語)の音訳で濁色の意。僧服として定められたが、これには色賤、体賤、刀賤をなすこと、即ち、濁色にすることと棄てられたようなものを素材に使用すること、裁断することの戒律の意があった。この刀賤により二十五條より五條の区別があり、大、中、小衣とされた。五條袈裟は小衣で安陀会(Antarvāsa)とも云われる。最も簡単な袈裟として用いられ、日本の平安時代には威儀(紐)で吊して細長く体にまきつけられたものを小五條とも呼んでいる。刀賤による五條の布を縫い合わすのでその名がある。
小袖(こそで)
薄色の小袖、白小袖、熨斗目紋付の小袖、雪持笹の総鹿の子疋田絞の小袖などあり、現在のきものの形をいう礼服の上衣の大袖に対し、またその下につける細袖の衣も小袖という。また同形の絹裏付綿入のものも指す。
小露(こつゆ)
直垂や大紋、素襖、長絹などの飾りの紐。もとは裂の縫い合わせのほころびを防ぐ為のものであった。水干の菊綴の略化したものと云える。
籠手(こて)
鎧の付属具で、腕を防護するもの。
小道服(こどうぶく)
道服の下の襞を縫い目にしたもの。
小直衣(このうし)
直衣と狩衣を折衷したもの。
紙捻(こびねり)
近世、冠をかぶる時に、冠の落ちるのをふせぐために冠の懸緒に用いたコヨリ。
小鰭(こびれ)
当世具足につけられた、肩を保護する為、肩上の外端につけられた部分。
こびんさき
下げ髪の垂れている要所を結ぶ細い紙片。
御袍(ごほう)
天皇の御召しになる袍の尊称。
護摩刀(ごまがたな)
修験の行者(山伏)の佩びる刀。
小結(こゆい)
侍烏帽子を髻に結びつける紐。
コンタス
キリスト教を信仰する人々の持つ十字架。